筋トレは毎セット限界まで? RIRの意味とセットを終える目安
筋肉を大きくしたいなら、「あと何回できそうか」を意識すると、セットの終えどきを考えやすくなります。経験者が脚を鍛えた8週間の研究では、あと1〜2回できそうなところで止めても、毎セット限界まで行った場合と近い筋厚の増加が見られました。ただし、種目やセット数が変われば結果も変わり得るため、1〜2回という数字を誰にでも当てはまる正解にするのではなく、記録しながら調整する目安として使いましょう。[1]
この記事は、基本の動作を練習していて、「回数は決めているけれど、どこまで頑張ればよいか迷う」人向けです。RIRの読み方から、実際の止め方、次回へつながる記録方法まで説明します。
RIRは「あと何回できるか」の見積もり
RIRはRepetitions in Reserveの略で、セットを終えたときに、限界まであと何回できるかを表します。自分で申告するRIRは測定値ではなく、残り回数の見積もりです。[2]
たとえば10回終えた時点で、「同じ動作ならあと2回できそう」と感じれば、推定RIRは2です。「10回やったからRIR2」なのではなく、10回のあとにどれだけ余力があったかで変わります。

- 推定RIR3:あと3回ほどできそう
- 推定RIR2:あと2回ほどできそう
- 推定RIR1:あと1回ほどできそう
- 推定RIR0:同じ条件では、もう1回を完了できそうにない
RIR0で止めることと、実際に次の1回を試して挙げられなくなることは区別しましょう。研究で使う「限界」の定義にも違いがあります。Refaloらの研究では、決められたフォームと可動域で、努力しても持ち上げる局面を完了できなくなることを限界としています。[1][2]
1〜2回残す方法で、どこまで分かっている?
Martin C. Refaloらの2024年の研究では、筋トレ経験のある男性12人・女性6人を解析しました。経験年数は平均で男性7.8年、女性7.5年です。同じ人の左右の脚をランダムに振り分け、片脚は毎セット限界まで、もう片脚はレッグプレスを推定RIR2、レッグエクステンションを推定RIR1で止めました。トレーニングは週2回、8週間です。[1]
超音波で測った大腿直筋と外側広筋の筋厚を平均すると、増加量の推定値は限界までの条件で0.181cm(1.81mm)、余力を残す条件で0.182cm(1.82mm)でした。どちらも約1.8mmの増加です。この条件では近い増加が見られた、という結果です。「誰でも完全に同じだけ成長する」という意味ではありません。[1]
限界までの条件では、最初から最後のセットにかけて回数や挙上速度がより落ちていました。これは、その場での神経筋疲労を捉える指標です。翌日の回復や、長期的なけがの起こりやすさを直接証明した結果としては扱えません。[1]
読み取る際には、次の条件も押さえておきましょう。[1]
- 対象は少人数の経験者で、介入前から全員にRIRの使用経験があった。
- 測ったのは太ももの2筋の、それぞれ一か所の筋厚。全身の筋量ではない。
- トレーニングは専門家が監督し、栄養摂取も記録・管理した。栄養面では、開始時の体重を基準に月1%の体重増加を目指す個別目標が設定された。これは研究条件の説明で、読者全員に増量を勧めるものではない。
- セット数は個人の従来の練習量に合わせ、5週目から20%増やした。
- 総反復回数や重量を掛けた総負荷量は、事前に同じに揃えたわけではなく、結果として近かった。
- 8週間を超える効果や、減量中・初心者・別の種目での結果までは確定しない。
「余力を残せばいつでも同じ」とは言えない
筋肥大に対しては、限界からどれだけ離れてセットを終えるかも関係します。Zac P. Robinsonらの2024年の探索的なメタ回帰では、限界に近いほど筋肥大が大きい傾向がありました。ただし、各研究のRIRを報告内容から推定しており、「最適なのは必ずRIR○」と確定できる分析ではありません。[3]
また、Thomas Hermannらの2025年の研究の抄録によると、若い筋トレ経験者の男女42人を、限界まで行う群とRIR2で止める群に分けました。全身を対象とする9種目を各1セット、週2回、8週間行う設計です。どちらも多くの指標で改善しましたが、複数の筋肥大指標は限界までの群に有利な傾向があり、条件間の絶対差は概して小さいと報告されています。[4]
この2つの実験は、種目・セット数・比較方法が異なります。編集部としては、「毎セット必ず失敗するまで行う」という一律のルールよりも、十分な努力を保ちつつ、後のセットも含めて調整する運用を提案します。非常に楽なところで毎回止める方法と、限界に近いところで止める方法を同じに考えないことも大切です。[1][3][4]
安全に使うための注意
RIRは、痛みや不調を押して続けるための数字ではありません。普段と違う息苦しさ・胸痛・めまい、その他の痛みや異常が出たときは運動を中止し、症状に応じて医療機関へ相談してください。持病や治療上の運動制限がある場合は、その指示を優先します。フリーウェイトでは、セーフティーや補助者などの安全体制を整え、限界を知るためだけに失敗する反復を試す必要はありません。
セットを終えるまでの3つの確認
以下は研究をそのまま再現する処方ではなく、日々の練習に使う編集部の運用案です。
1. 始める前に、同じ動作の基準を決める
使う可動域、座席の位置、反動の有無などを揃えます。次の1回を数えるために動作を変えると、前回と比較しにくくなります。フォームを習得している段階では、RIRの数字を当てることより、動作を再現することを優先してください。
2. 最後の数回で「同じ動作ならあと何回?」と考える
基本動作に慣れた人が筋肥大を目的に取り入れるなら、まず推定RIR2前後で止め、その後のセットの回数と動作を記録するところから始める案があります。これは全種目の最適値ではありません。握力や姿勢の維持が先に限界になった場合は、その理由も書き分けます。
3. 終えた直後に、余力と終了理由を残す
「10回、推定RIR2、フォーム維持」のように記録します。判断が曖昧なら「RIR1〜3くらい・自信低め」と書いて構いません。Israel HalperinらのRIR予測のレビューでも、予測が完全に正確ではないことが示されています。「経験者なら必ず当てられる」と考えず、見積もりであることを記録に残しましょう。[5]
場面別に考える、止めどきの例
以下はいずれも説明用の架空例です。実測データや体験談ではありません。
場面A:レッグプレスを10回終え、同じ深さならあと2回できそう
→ 推定RIR2として終了する例。次のセットでも動作と余力を記録し、初回だけで練習全体を判断しません。
場面B:10回目で反動を使い、可動域も狭くなった
→ 回数を足す前に終了する例。「10回・動作基準を維持できず終了・RIR不明」と記録し、次のセットの重量や回数設定を見直します。姿勢が崩れた理由から、狙った筋肉のRIRを正確に割り出せるわけではありません。
場面C:10回終えても、同じ動作でまだ5回以上できそう
→ 想定より余力が大きかった可能性があります。今回の数値を記録し、次回は反復回数または重量のどちらか一つを少し変える案があります。急いで両方を増やす必要はありません。
場面D:後半のセットで回数が大きく落ちた
→ 余力だけでなく、休憩時間や種目の順番も確認します。「追い込みすぎ」と即断せず、比較する条件を揃えて次回の変化を見ます。
重量・回数に「余力と理由」を足して記録する
同じ重量を同じ回数挙げても、残った余力が違えば練習の状態は違います。次のような記録なら、数字が変わった理由を振り返れます。
説明用の架空記録:レッグプレス。同じ機械・座席・可動域で実施。
| セット | 表示重量 | 完了回数 | 推定RIR | 直前の休憩 | 終了理由・メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 80kg | 10回 | 2 | 準備後 | 同じ動作であと2回ほど |
| 2 | 80kg | 9回 | 2 | 3分 | フォーム維持 |
| 3 | 80kg | 8回 | 1〜2 | 3分 | 推定に自信がない |

重量は説明用で、推奨重量ではありません。機械が変われば表示重量も単純比較しません。
次回は、同じ条件で「回数が増えたか」「同じ回数で余力が変わったか」を確認します。たとえば、同じ重量・動作・推定余力で回数が増えたなら、進歩を考える材料になります。ただし、一度の変化だけで筋肥大を判定せず、複数回の記録を見てください。
次回は、普段の記録に「推定RIR」と「セットを終えた理由」を一つずつ足してみてください。毎回どれだけ苦しかったかだけでなく、同じ動作をどれだけ積み重ねられたかを振り返る材料にできます。
参考資料(番号は本文に対応)
[1] Refalo MC, et al. Similar muscle hypertrophy following eight weeks of resistance training to momentary muscular failure or with repetitions-in-reserve in resistance-trained individuals. Journal of Sports Sciences. 2024;42(1):85–101. DOI: 10.1080/02640414.2024.2321021.
原文PDFを確認:https://dro.deakin.edu.au/articles/journal_contribution/Similar_muscle_hypertrophy_following_eight_weeks_of_resistance_training_to_momentary_muscular_failure_or_with_repetitions-in-reserve_in_resistance-trained_individuals/25538266
書誌・抄録:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38393985/
[2] Pelland JC, et al. Methods for Controlling and Reporting Resistance Training Proximity to Failure: Current Issues and Future Directions. Sports Medicine. 2022;52:1461–1472. DOI: 10.1007/s40279-022-01667-2.
確認範囲:著者抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35247203/
[3] Robinson ZP, et al. Exploring the Dose-Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions. Sports Medicine. 2024;54:2209–2231. DOI: 10.1007/s40279-024-02069-2.
確認範囲:著者抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38970765/
[4] Hermann T, et al. Without Fail: Muscular Adaptations in Single-Set Resistance Training Performed to Failure or with Repetitions-in-Reserve. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2025;57(9):2021–2031. DOI: 10.1249/MSS.0000000000003728.
確認範囲:著者抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40249908/
[5] Halperin I, et al. Accuracy in Predicting Repetitions to Task Failure in Resistance Exercise: A Scoping Review and Exploratory Meta-analysis. Sports Medicine. 2022;52:377–390. DOI: 10.1007/s40279-021-01559-x.
確認範囲:著者抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34542869/
